大判例

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東京家庭裁判所 平成10年(少)3834号

主文

少年を医療少年院に送致する。

理由

(ぐ犯事由及びぐ犯性)

少年は、平成10年3月、都内の私立高校を卒業後、同年4月、都内の私立短期大学に入学した。大学入学とともに足立区内のアパートで単身生活を送るようになったが、同年4月下旬ころ、かねてから興味を抱いていた覚せい剤を入手しようと、自称暴力団員のA(35歳位、職業不詳)に声をかけたのをきっかけに同人と交際するようになり、同人を通じて入手した覚せい剤を同人とともに使用(吸引)しては、性的関係を重ねるようになった。同年6月、Aとの交際や覚せい剤の使用が両親に発覚し、両親からAとの交際を絶ち、覚せい剤の使用を止めるよう求められ、足立区内の別のアパートに転居させられた。転居先のアパートでは、覚せい剤の使用は控えたが、Aとの交際は続け、同月末、同人との交際が続いていることを両親が知るに及んで、両親から厳しい叱責を受けると、アパートを出てA方(住居不詳)に身を寄せるようになり、その後、家庭に戻るよう求める両親の説得を無視して、再びAとともに覚せい剤の使用を繰り返すようになり、性的関係も重ねていた。このように、少年は、正当な理由なく家庭に寄り附かず、不道徳な人と交際し、保護者の正当な監督に服さず、自己の徳性を害する行為をする性癖があり、このまま放置すればその性格に照らし、将来覚せい剤取締法違反等の罪を犯すおそれがある。

(法令の適用)

少年法3条1項3号本文、同号イ、ロ、ハ、ニ

(処遇の理由)

1  少年は、歯科医師をしている父親の長女として生まれ、弟、妹各1人を同胞として育った。小学校のころから、両親からの学業面での期待が大きく、小学校を卒業する際には、中高一貫教育の私立中学校を受験し、進学を果たしている。中学校に進学すると、陸上部で活躍するなど特段問題なく過ごしていたが、高校に進学すると、次第に学業意欲を失うようになった。怠学、夜遊び、不良交友が始まり、母親に反抗的な態度を示すこともあった。志望大学の受験に失敗し、無試験で推薦入学できる私立短大の2部に進んだが、少年にとっては不本意な進学であり、その大学生活も思い描いたものとは違っていた。両親の期待に沿いきれず、自分なりの目標や方向も見出せず、投げやりな気持ちが強まる中で、興味半分で覚せい剤を求めて不良者に声をかけ、その者との乱れた関係を続けながら、覚せい剤の使用を繰り返すに至っている。そして、同年9月16日、ぐ犯送致され、観護措置がとられると、鑑別所での検査で妊娠が判明している。このような覚せい剤使用に至る経緯や、一時期両親の指導で覚せい剤を止めながらもその後間もなく使用を再開していること、交際相手との関係を絶ちたいと思いながらも、結局、同人と別れられず、見通しのない退廃的な生活を続けてきたことなどを考え併せると、薬物への精神的依存は相当程度進みつつあったものといえる。

2  両親は、少年を立ち直らせようと、少年の交際相手と交渉したり、精神科医に相談するなど少年の監護には相当の熱意を示している。しかしながら、少年は、両親が手をかければかけるほど、それを愛情というよりは規制ととらえ、ますます反発するという悪循環に陥っているのであり、両親自身、少年との関わり方を模索している状態である。

3  少年の処遇に関し検討するに、初回係属であることや、本件を契機として両親との関係を再構築することを期待し、在宅処遇という考えもありえよう。しかしながら、観護措置、調査、審判という過程を経て、しかも妊娠という事態に直面してもなお自分を見つめることを避け、表面的な対応に逃げている少年の姿勢を考えるとき、在宅で、妊娠への手当をし、両親との関係を修復し、薬物に依存した生活から規則正しい生活に改めさせ、不良交友を絶ち、フラッシュバック等の後遺症状に備えることは極めて困難であり、失敗すれば、再び覚せい剤に手を染める危険性が極めて高い。

そこで、以上の諸事情を総合考慮すると、この際、少年を矯正施設に収容し、薬物の影響を遮断したうえで系統的な教育を施し、自らを振り返らせ、妊娠への処置や、その後の身体的、精神的ケアを行い、時間をかけ、じっくりと両親との関係を調整し、少年が自信を回復し、生活目標をもてるように援助することが最もその福祉に資するものと考える。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して少年を医療少年院に送致することとし、主文のとおり決定する。

なお、前記の身体的、精神的ケアを含めた医療的措置が終了した後は、中等少年院に移送することが相当と考え、別途その旨勧告する。

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